1995年1月17日の阪神・淡路大震災は、私たちの町に多くの犠牲者と大きな被害をもたらしました。市民の多くは、この阪神地域を自然に恵まれ、生活にも便利な所だとは思っていても、このような大きな地震が起こる所だとは誰も考えていなかったのではないでしょうか。
阪神地域は、この数十年の間に急激な人口増加があり、各市とも町の拡充を図るため、田畑やあき地の宅地などへ転用、山間部での開発や、海岸、池、谷の埋め立てなどを行い、都市施設の整備を進めてきました。これに伴って、水道・電気・ガス・通信・交通などといった都市の諸機能(ライフライン)も整備され、暮らしの「快適さ」や「便利さ」を支えてきました。
しかし、たった十数秒の地震によって、住宅やビルが壊れ、高速道路や鉄道の高架までもが倒壊するなどし、町は壊滅的な打撃を受け、都市機能は完全にマヒしました。
また、水道やガス、電気などが一瞬のうちに使えなくなったことにより、食事、トイレ、洗濯、入浴などといったこれまでの当たり前の生活ができなくなり、心身ともに大変な苦痛を強いられました。住宅や家財が瞬時にゴミと化してしまい、築き上げた人生や生活を根こそぎ奪われ、絶望感に苦しめられた人たちもいました。
私たちは、今回の震災体験の一つ一つを決してムダにはできません。地震という自然現象を通じて、地球から私たちに投げかけられた「自然とのつきあい方」について、一人ひとりが考え直してみる必要があるのではないでしょうか?毎日の目まぐるしい生活の中で、こうしたことを改めて考える余裕がないのも現実かもしれません。
しかし、日が経てば経つほど、当時の緊張した意識は薄れていきます。人々の記憶から震災体験が消え去らない内に、2度と同じ惨事を繰り返さないためにも問題を整理しておく必要があります。
私たちは、自分の暮らしている町の歴史や自然、地理的条件、コミュニティのことなどについて、どれだけ知っているでしょうか?また、自然に対する思いや考え方、生活スタイルについて振り返ってみたりすることはあるでしょうか?
「セイフティ&エコガイド事業」は、市民の皆さん一人ひとりに、自分の暮らしている町の歴史や自然、地理的条件などへの安心を高めていただくとともに、自分自身の自然観や暮らしぶりを振り返ることにより、「セイフティ(安全)とは何か」「エコ(自然と共生)とは何か」を考えるきっかけにしていただくことを目的にしています。
この『語り部ノート』もそのための活動資料として、市民ボランティアの方々と共に作成しました。
別添ファイルにあるワークシートは、町の歴史や自然等を学ぶ、セイフティ&エコガイド活動で使用されています。セイフティ&エコガイド活動については、市環境都市推進グループまでお問い合わせください。
『語り部ノート』では、私たちの町を「セイフティとエコロジー」という視点で見直し、それをもとに本冊子で展開される各地域の人々の暮らしや文化、自然の移り変わりについて学んでいただければと思います。
六甲トンネルの東側、上大市・松籟荘付近では、わずか700m の間で新幹線の4ヶ所の橋げたが落ちました。この間の190本ある橋げたの支柱の内60本が被害を受けました。上の写真のようにほとんどは支柱の下部付け根が折れており、地震の大きなゆれに支柱が絶えることができず折れたと考えられます。この地域の地層は「沖積層」と呼ばれる砂まじりの軟らかい地ばんでした。
阪神高速道路でも橋げたが落下しました。高速道路の被害では、日本では初めてというほど、大きな災害となりました。この阪神高速道路の被害は、神戸線に集中しました。神戸線が通る兵庫県南部の平野部は、江戸時代までは砂浜や湿地でした。地ばんが軟らかいため支柱が大きくゆれ、橋げたがずれて、高架の落下につながりました。
また、コンクリートの橋脚がちょうちんのようにふくれ、鉄筋がむき出しになって壊れる被害がありました。
このため、橋脚が短くなり、橋げたが傾いたり、ずり落ちたりして、さらに被害が大きくなりました。
阪急電車は、西宮北口駅と夙川駅の間で高架部分が連続して崩れ、レールが宙づりになるなど大きな被害を受けました。阪急今津線の線路の上には新幹線と国道171号線の高架が落ちてきました。
阪急電車、JR や新幹線もともに不通となり、神戸−大阪間の移動に大きな影響を与えました。
不通になった区間では、電車に代わって代替バスが走り、通勤・通学などの人の流れが大きく変わりました。
地震とそれに伴う液状化現象は、学校にも大きな被害をもたらしました。大きく亀裂の入った運動場、傾いた校舎、プールが使えなくなったり、体育館がつぶれた学校もあります。市内のほとんどの学校が、何らかの形で被害を受けました。
そのため学校は、1月17日より臨時休業になりました。この間、自宅に住めなくなった子どもたちは、市内の避難所や市外の親せきなどに避難しました。中には県外の遠くの親せきなどに移り、一時的に避難した地域の学校に転校する子どもたちもいました。
種別 | 台風 | 梅雨 | |||||
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年月日 | 昭和9.9.21 | 昭和25.9.3 | 昭和39.9.25 | 昭和13.7.3〜5 | 昭和36.6.26〜28 | 昭和42.7.9 | |
災害種目 | 室戸台風 | ジェーン台風 | 台風20号 | 梅雨前線 | 梅雨前線 | 7月豪雨 | |
人的被害(人) | 死 者 | 25 | 2 | 1 | 4 | 2 | 6 |
行方不明 | - | - | 0 | 2 | - | 0 | |
傷 者 | 57 | 261 | 32 | - | 3 | 4 | |
住家の被害(棟) | 全 壊 (焼) | 76 | 175 | 10 | 3 | 5 | 5 |
流 失 | 138 | 21 | 50 | - | - | - | |
半 壊 (焼) | 228 | 1,562 | 87 | 6 | 10 | 10 | |
一部破損 | - | - | - | - | - | 17 | |
床上浸水 | 2,932 | 1,609 | 1,160 | 2,300 | 620 | 1,289 | |
床下浸水 | 2,342 | 4,323 | 6,540 | 12,000 | 10,627 | 18,785 |
※ 昭和40年度から住家の単位が「戸」から「棟」にかわり、「一部破損」が追加された。
<西宮市に影響を与える可能性が高い地震>
(1) 南海道地震 (1707, 1854, 1946)
(2) 有馬高槻構造線〜六甲断層帯地震〜 (1596)
(3) 山崎断層地震 (868)
(4) 中央構造線地震 (文献記録はないが、地形・地質学的には可能性大)