語り部養成セミナーに参加したり、語り部ボランティアとして取材したりした過程は、驚きの連続でした。
自宅の近所に流れている「溝」が、実は、江戸時代に作られた灌漑用水路で、その建築にあたっては農民たちのさまざまなドラマの歴史が刻まれていること、ほとんど毎日散歩している道からわずか3メートル入ったところに古墳が存在していたこと、自転車で通るときにちょっぴりおっくうだと感じながらそれほど気に留めたことのないゆるやかな坂道が、実は、平安時代の海岸線のなごりであったこと、花がきれいとしか思っていなかったハリエンジュの木が、かつて六甲山系のがけ崩れ防止策のエースだったにもかかわらず、かえって土砂崩れを誘引していたこと、など、枚挙に暇がありません。
語り部ボランティアがそれぞれに発見した事柄をボランティア全体で共有したい、語り部活動をする際の資料として知見を蓄積したい、そんな思いでこの冊子が編集されました。
本冊子の母体は、初代の『語り部ノート』です。これは近藤浩文さんの数回にわたる講演のテープおこしを基礎として編集されました。その後『語り部ノート』は少しずつ改訂されていましたが、今回は、抜本的な改訂となりました。
まず第1に、語り部ボランティアがあらたに収集した記事を中心に据えました。第2に、既存の地区に加え、なぎさ街道の章を新設しました。第3に、各章にコース地図を添付しました。第4に、コース地図上の主な地点に番号を振り、本文から参照できるようにしました。第5に、この資料が声を出して語られることを念頭におき、固有名詞や難漢字には積極的にルビをふりました。第6に、写真と本文のつながりを重視した割り付けにしました。第7に、江戸以前の年号表記には西暦を併記し、明治以降の西暦には年号を併記するようにしました。
初代『語り部ノート』をそのまま引き継いだ箇所もあります。上田司郎さんが執筆された「西宮は西の都」「地球と生命の進化」「西宮のあゆみ(小史)」がそれにあたります。なお、「西宮のあゆみ(小史)」は、オリジナルを尊重しつつ、あらたに書き加えられた記事等を鑑み、少しだけ加筆・修正させていただきました。
最後になりましたが、語り部ボランティアを発足当初からご指導いただいている近藤浩文さん、著書『町名の話』を通してそして勉強会の講師としてお教えをいただいた山下忠男さん、たびたび相談に乗っていただいたり貴重な資料を提供していただいたりした、市史編集室・行政資料室・広報課・教育委員会・郷土資料館の職員のみなさん、各地域担当のボランティアが取材過程で個々にお世話になった数多くの地域住民のみなさんに感謝の意を表したいと思います。また、本冊子が西宮市環境保全課環境啓発係の発行である関係上、お名前をお挙げすることができませんが、啓発係の職員とこども環境活動支援協会のスタッフのみなさまには、何から何までたいへんお世話になりましたことを付記させていただきます。ありがとうございました。
平成14年3月
西宮まちの語り部ボランティア添田晴雄
本冊子作成のための資料収集、原稿執筆、編集作業は、以下の語り部ボランティアが行いました。
青木 輝子 | 麻田 哲 | 浅香 利恵 | 浅野 勝 | 東 芙美子 | 井澤 彬 | 今中 璋江 |
岩崎 輔夫 | 大河内 明 | 大河内 園江 | 折茂 周一 | 加藤 かず | 川口 耕三郎 | 木川 きぬ子 |
神代 陸 | 黒田 東城雄 | 小寺 正之介 | 後藤 吉彦 | 小林 重次 | 鹿本 郁代 | 鹿本 正則 |
柴田 忠昭 | 清水 由美子 | 鈴木 依子 | 添田 晴雄 | 曽谷 千尋 | 高見 良子 | 玉置 恵津子 |
津田 喜久子 | 頓田 晴美 | 中尾 雅和 | 中野 沙知子 | 中村 和夫 | 畑 修治 | 平田 三千子 |
比留井 洋子 | 廣山 ちかひ | 藤田 悦子 | 藤田 貢 | 古本 伴昭 | 細江 正義 | 森岡 紀美乃 |
山内 悦子 | 山田 博子 | 山本 元子 | 渡辺 郁子 |